東京高等裁判所 昭和26年(う)267号 判決
原審第一回公判期日において、弁護人が被告人の妻すが子外二名の証人の尋問を請求し、右請求に対し、原審検事が所論の意見を述べたところ原裁判所が、右証人の尋問をいずれも必要がないと認めて、弁護人の請求を却下したこと(右請求の趣旨如何は記録上明らかでないが、弁論の全趣旨に徴すると、被告人の情状を立証することにあるものと認められる)被告人の情状を立証するため証人の尋問を請求することが弁護権の正当な行使の範囲に属すること及び被告人の情状如何が刑の量定に影響を及ぼすことはいずれも所論のとおりである。しかし証拠調の請求を許すべきか否かは、当該裁判所の専権に属する事項であるばかりでなく、況して被告人の情状如何は刑事訴訟法第三三五条第二項に規定された「刑の加重、減免の理由となる事実」には該当しないのであるから裁判所は弁護人から被告人の情状立証のため証人尋問の請求を受けた場合においても、右請求を許容すべき義務はなく又情状に関する事実の主張に対して判断を示す必要もない。従つて原審が所論の措置に出でたことは相当であつて、弁護権の行使を不当に制限したり或は刑事訴訟法第三三五条第二項の規定に違反した違法があるとは解せられない。
論旨は理由がない。